Cryptobiosis of Annatto60

アナトー・シキソのクリプトビオシス

ミツバチの巣の内乱

もしも働きバチに「巣箱の雄は誰が産むのがいいか」と尋ねれば、「自分、女王、他の働きバチ」と答えるだろう。これは血のつながりの濃い順だ。女王蜂は、14〜20匹の雄蜂と交尾して制止を混ぜ合わせる。故に、働きバチ同士はほとんどが、実の姉妹というより、異父姉妹である。働きバチは、自分の息子と遺伝子を半分共有し、女王の息子とは4分の1を共有する。そして、異父姉妹である他の働きバチの息子との遺伝子の共有部分は4分の一以下である。したがって、卵を産む働きバチは、産まない働きバチよりも、子孫に大きく貢献することになる。すると、数世代経つうちには、卵を産む働きバチの遺伝子が優位を占めるようになるが、実際にはそうはならない。なぜか? 働きバチは女王の息子よりも、自分の息子を贔屓にするが、一方で、他の働きバチが生んだ息子よりも女王の息子を大切にする。彼女たちは仲間の働きバチが「女王陛下の」コロニー内で子供を持つくらいないように警戒する。他の蜂が産んだ卵を殺してしまうと言う単純な方法で。女王のフェロモンの匂いがついてない卵は、働きバチによって食べられてしまう。

女王アリは別のやり方で問題を解決する。先天的に生殖能力のない働きアリを産むのだ。卵を産む能力がないため、働きハリが反乱を起こすことはない。だから女王は多数の雄と後尾する必要もない。すべての働きアリは、同じ両親を持つ姉妹である。

マルハナバチはコロニーをあまり大きくしない。働きバチと雄蜂を合わせて400匹程度だ。ミツバチのコロニーが何千匹にもなるのとは大違いだ。さらに、季節の終わりには、女王たちはあちこちに分散して冬眠し、翌年新たに巣を作る。女王と行動を共にする働きバチはいない。ミツバチとマルハナバチの習性の違いはどこから来るのか? それが最近(この本の出版は1996年)になって判明した。マルハナバチの女王は単婚で、一匹の雄としか後尾しない。一方、ミツバチの女王は一妻多夫である。その結果、遺伝学的計算に面白いことが起こる。ハチの雄は未受精卵から生まれる。つまり、すべての雄蜂は母親の遺伝子の半分を持つ純粋なクローンである。それとは対照的に、働きバチは父親と母親を持ち、全員がメスである。ということは、マルハナバチの働きバチにとって、母親である女王の息子(25%)よりも、姉妹である別の働きバチの息子(37.5%)のほうが血のつながりが濃いのである。だから、コロニーに雄蜂が生まれ始めると、(姉妹よりも女王の味方をするミツバチとはちがって)マルハナバチの働きバチは姉妹と共謀して女王に反抗し始めるのである。彼女らは王子のかわりに働きバチの息子を育てる。マルハナバチのコロニーが小さく、各シーズンの終わりに解散する理由は、この女王蜂と働きバチの不協和音にあったのだ。
(マット・リドレー『徳の起源』p41-44)