Cryptobiosis of Annatto60

アナトー・シキソのクリプトビオシス

チースとチーズ

しかし私はいったい何時頃からチースをチーズと言い出したのかと考えて見ると不思議な気持ちがする。大学生の当時は確かにチースと言っていたのであって、その時分にはさも英語を知っているらしくチーズと言ったりするのは歯が浮くことのように考えていた。トマトがトメトで、ラヂオがレヂオだったりするのは一般に流行らずに終わったらしいが、チースはいつの間にかチーズになっている。そう思うとピスケットが又ビスケットに変わっているが、これなども私自身の言葉として、何時頃からピをビに更めたか判然しない。

 

(内田百閒『御馳走帖』p165)